高松地方裁判所 昭和45年(わ)335号 判決 1971年8月17日
主文
被告人を罰金七万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は自動車運転の業務に従事しているものであるが
第一 昭和四五年一月九日午前七時四〇分ごろ普通乗用車(香五そ三三八七号)を時速五〇キロメートルで運転し、県道高松長尾大内線を三木町方面から高松市方面に向け西進中、木田郡三木町大字池戸三、二一〇番地の四先交差点手前約二〇メートルにさしかかつた際、右折の方向指示灯をつけ、同交差点手前約六メートルの路上(幅員約八・五メートル)に来たとき時速約三〇キロメートルで右ハンドルを切つて右折しようとしたが、自動車運転者としては後方の安全を確認するとともに交差点中心直近内側を右折し事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、後方の安全を確認せず漫然同速度で交差点手前約六メートルの処から右小廻りで右折した過失により、右折進行中後方から同車を追越そうとして時速約六〇キロメートルで進行してきた多田実(当二一年)運転の自動二輪車(三木町二二六七号)に気づかず、同車に約四メートル接近してはじめて気づき、あわててハンドルを左に切ると同時に急停車の措置をとつたが間に合わず、自車の右前フエンダミラーを相手車のハンドル左側に接触させ右自動二輪車を転倒せしめ、同人の頭部をして右交差点西北角の街路灯(鉄柱)に激突せしめ、よつて同人に対し右穹隆部頭蓋底部骨折などを負わせ、同午前一一時五分高松市番町四丁目一番三号高松赤十字病院において右傷害により死亡するに致らしめ、
第二 昭和四五年三月五日午後五時一五分ごろ、右普通乗用車を運転して時速約三〇キロメートルで国道一一号線を東進し、高松市田町三番地の一八先交差点にさしかかつた際、自動車運転者としては絶えず前方を注視して進行し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、右交差点の信号にのみ気を奪われ、漫然同速度で進行した過失により同交差点直前で信号待ちのため一時停車中の笠井順次(当三〇年)の運転する普通乗用車(香五さ一四一九)に約三メートル接近して気づきあわてて急停車の措置をとつたが間に合わず自車前部を相手車後部に追突させその衝撃により同人に対し全治二カ月間を要する頸部捻挫などを負わせたものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するところ、各罪につきいずれも所定刑中罰金刑を選択し以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を罰金七万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。
訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させる。
よつて主文のとおり判決する。